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2005.08.09 Tue

【UB?ユニットバス】 [BLMオリジナルエッセイ/コラム]

ユニットバスの四角い空間は妙に落ち着く。アヤはバスタブに腰掛け、彼はフタをしめた便座の方に座り、かれこれ静かに3時間は経っていた。くわえ煙草ならぬ「くわえ歯ブラシ」で、別に愛を語り合う訳でもなく、別れ話の冷戦を繰り広げている訳でもない。今はお互いの愛を確かめ合うことよりも、それぞれの存在ーアイデンティティーを自分で見出すことの方がずっと先だった。

「前歯の裏も磨けよー。」
「うん…お腹すいてこない?」
「歯ブラシ食ってんだから腹なんか減らねーよ^^」

アヤの彼氏はそういって 笑いながら便座から立ち上がり、アヤの口からスポンと歯ブラシを抜くと、代わりに洗面台の蛇口にかけてあったボンボリ付きのヘアゴムをアヤの口に押し込もうとした。彼が鼻歌を歌いながらユニットバスのドアをあけて玄関兼台所スペースの方へ出て行く。喫煙タイムだ、とすぐに分かった。ドアの隙間から入り込む冷たい空気とマルボロの煙を感じながら、アヤは一人その場に残ったまま口の中でボンボリを歯磨き粉の泡と一緒にコロコロ転がしてみた。


洗面台の蛇口は微妙に閉まりきってなくて、ある一定のリズムで水滴が落ちていた。その音はきちんと音程までついていて、繰り返されるピチョンッチョン…という音が、まるでシーケンスフレーズのようで心地よい。アヤはそれに合わせて自分も指先だけでリズムをとって合奏を始めた。しかし突然不規則に飛び込む外界の効果音が耳に入ると、気持ちが急に「ここ」に引き戻された。怖くなってユニットバスの扉を慌てて閉め直した。


この扉の向こうには現実の世界が待ってるんだ。
今のアヤにとってはそれが怖くてたまらないことだった。
部屋のTVからはニュースが流れ、コンポからは彼の好きなロックが流れる。窓からはトラックの音に混ざって蝉が負けじと叫び、音だけではない、恐ろしい数の情報量が自分の五感に飛び込んでくるに違いない。

その中でどうやって自分は存在すればいいのだろう。
何を選び取り、何を捨てたらいいのだろう。
そして選び取ったものが正解かどうかは誰が知ってるのだろう。
そしてそれがもし間違っていた時、
どうやって、どこで、自分は存在すればいいのだろう。


「大人や権力や何者かに縛られている」なんていうありきたりな思いから飛び出した世界は、想像していた楽しいだけの世界ではなく、あまりにも広過ぎて、自由は何よりも厳しくて、アヤの五感はしばらくしてから警報音を鳴らし始めた。誰も自分を縛ってくれない世界は、アヤの存在自体をもあやふやにさせていた。そんなこんなで悩み始めて、同じところから動けなくなって、どのくらいたってしまったのだろう。

ここUBは今のアヤにとって狭くて一番落ち着く場所だった。誰も自分を責めないし、誰も自分を強制しない。ここでは確かに、アヤはアヤとして呼吸が出来た。

だけど、今ここにいる私を誰も知らない。
とアヤはふと思った。

知っているのは彼と歯ブラシさん達と、鏡の中の自分くらいで、
どうして人は結局、
自分の存在を
自分一人だけでは確認出来ず、
誰かに存在を認めてもらいたいと願うのだろう。

小さくても、その中でだけは自分でいられて、

自分で生きてる事を実感出来て、
そしてそのことを誰かにちゃんと認めてもらえる、
そういう場所を、
ユニットバスに代わる自分の場所を、

ここからちゃんと出て、たぶん探さなければ行けない ー。



気付けば口の中のボンボリは、いつのまに戻って来た彼の手によって水でちゃんと洗われて、鏡の中のアヤの前髪にちょんまげのようになって付けられていた。口の中も自分でゆすいだのかすっきりしていて、今度はかわりにアーモンドチョコレートが入っていた。彼はさっきと同じ定位置…便座の上で恋愛小説を片手に、アーモンドチョコレートの早食いをしている。よく考えれば二人とも今日はまだ何も食べていない。アヤは口の中の、微妙に歯磨き粉味のアーモンドチョコレートを、噛み砕いて飲み込んだ。


「ご飯…買いに行こ?」
「…おう。なに、もう平気か?」
「うん。平気^^」

こんなことを毎日繰り返す私とよく一緒にいてくれるな彼は…とアヤは思った。と同時に、自分とどうこうの前に、彼も自分の居場所をきっと迷いながら探してるんだなってことは、黙ってても分かった。
少しびくびくしながらユニットバスを出る。ちょっとお尻がしびれていた。真夏だけど彼のフード付きの大きなパーカーを慌ててかぶる。サンダルをつっかけて彼のTシャツをつまんで歩き出す。

アヤの視界に人や車が飛び込む。アヤはキャパシティーがオーバーしないように自分の意識を思考の方に向けた。コンビニに着けば、あたりまえだけど今日もいろんなものが並んでるのだろう。 彼はいつものジュースとマルボロとコッペパンを買うのだろう。

ー そして私は、全てがユルされているはずの選択肢を前に、怯えるのだろう。

それでも一つずつ、
誰の手でもなく、誰の責任でもなく、
自分の手で確かに選び取って行くことを、
していかなければいけない。
していけるようになりたい… ー


その日はアヤは、
イチゴヨーグルトを、自分で選んで、買って食べた。
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